第20回「桃陰文化フォーラム」 山岨眞應先生

桃陰文化フォーラム事務局
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第20回「桃陰文化フォーラム」報告

さる5月30日(日)午後2時より「応挙さんの描こうとしたもの」と題する「第20回桃陰文化フォーラム」講演会が60名あまりの聴衆を集め、視聴覚教室で開催されました。

講師の山岨眞應先生は天高23期生、京大工学部に進み化学メーカーの研究室で勤務後、「5年ごとに自分の人生を見つめ直す」というお考えに従い、10年間のサラリーマン生活から新たに僧侶として生きる道を選択されました。現在は、兵庫県香住にある大乗寺の副住職として多方面でご活躍です。
当日は、日々襖絵に接していらっしゃる方にしかできない新鮮なご指摘がかずかずあり、眼から鱗の感を強くしました。例えば
・ 襖絵(障壁画)は本来室内で見るもので、現状のように廊下から見るのは邪道。
・ 絵を背中で感じながら、五感すべてを働かせて見るのが大切。
・ 余白の効用~描かないことで見えてくるものがある。
・ 日本画で最も大切なのは光と影、光と闇である。

応挙は結局、上記の事柄を前提として、自然と一体化した座敷空間を大乗寺の襖絵を通して実現しようとしたのだという先生のお教えで、これまで見慣れてきた日本画への新たなアプローチが示された気がしました。ありがとうございました。
 あらためて遠方からお越しいただいた山岨眞應先生に、厚くお礼を申し上げます

<参加者感想(一部抜粋)>


  • 絵の描き方や見方などがよく分かった。大乗寺の中がどうなっているかが分かり、大乗寺に行ったことがないのでその絵を生で見てみたいです。こんなにすてきな襖絵を知れてとってもうれしく思っています。
  • 作品の見方がずいぶん変わりました。最初「空間を描く」の意味がよくわからなかったのですが、わかりやすいお話でとても興味を持ちました。「生活の中でもそうだなぁー」と主婦として思いました。空間の演出を家の中の過ごしやすさなどにつなげて考えてしまいました。バイタリスとか香りで記憶が細かい所までよみがえるというのは本当ですね。ちょうどそういう本を読んでいて、なるほどと思いました。
  • 応挙さんの絵に対する思い、情熱が私にも伝わったような気がします。お話ありがとうございました。
  • 美術館へ行くのは好きですが、今までは平面としてしか見ていなかったと思います。今日、お話をお聞きして"空間"描かれていないもの"を見たい、感じたいと思いました。なかなか、ゆっくり日本画を見ることはありませんが、ぜひ見てみたいと思います。
  • 本物の襖絵をゆっくりと見てみたくなりました。襖絵をみるということを考えたこともなかったので、新しい興味ができました。
  • 最後のローソクの炎の絵が印象的でした。実際見ることはできないのですが、そこは見えないものを自分で動画にし、想像し映像にすることでみえてくるのかなと
  • 「描かないことで描く」「絵は空間を描くためのもの」「光のあたらないものを描くために光のあたるものを描く」「襖絵は"見る"ものでなく"感じるもの"」など、今までの固定観念を180度ひっくり返すお話を、目の前で実際の画像を見ながら聞けて感動した。
  • 重要文化財の襖絵の数々...これから「円山応挙展」が催されて出掛けたとしても、大乗寺に昼間のうちに出掛けたとしても、写真集を手にしたとしても、おそらくは知ることが(感じることが)できなかった神秘さをこの話でたくさん伺うことができた貴重な時間でした。時間を超えて、山岨氏の口唇を通して師が語り伝えたのでは・・・とも思いました。
  • 昔の方が何の機械も使わず色々なものを作り出す工夫を何十年何百年としてこられた事は、お城や建物を見て感じる事ですが、今回の襖絵で、今で言う空間プロデューサーの様に全体の景色を考え、すばらしい知恵を持っておられた事を知りました。襖絵のことまで考えたのは今日が初めて。応挙さんは、今生きておられるならすごいと思う。
  • 修行僧についての話などをもっと聞きたかったです。詳しく応挙の襖絵について説明していただき、ぜひとも大乗寺へ行って本物を見たくなりました。他のお寺へ行ったときも、これから襖絵を見る「目」が変わりました。
  • 難しいお話もありましたが、絵の見方:描いた人の心を思いながらみるとこんなにも絵が違ったものに見えてくるのかと、スライドながら感心し、ぜひ本物を見たいと思いました。経年を楽しむ:人間も経年により、より深みがでるものだと思います。その年令を楽しめる人になれたらと話を通じて思いました。
  • 日本画に対しての感じ方が変わりました。五感を生かして本物を感じてみたいとお話をうかがってせつに思いました。一番みてほしい状態で見られる機会を探し回ってみたいと思います。
  • 色々なお寺で襖絵を見る機会があるが、襖絵だけを見るのではなく、それを背中にして外の景色とつながるということをお聞きし、これからそういった見方を是非してみたいと思いました。貴重なお話ありがとうございました。
  • 襖絵の奥深さ、素晴らしさ、経年を越えて感じられることが本当に神秘的だと思いました。観る人の感覚で完成させる、余白は時間・空間を作る、絵を背にしてなど、私もぜひ一度、自身で完成させたいと思いました。
  • あっという間の2時間、楽しく引き込まれていきました。奥深い話をありがとうございます。応挙ファンの友人に声をかけなかったのを申し訳なく思いました。
  • 私は、どちらかといえば西洋画より日本画の方が好きです。先日も長谷川等泊展とルノアール展に行って、家族に水墨画の良さを説明しにくくもどかしかったのですが、西洋画の光と影・日本画の光と闇のちがいや、襖絵に描かれている立体空間(三次元)などとてもわかり易く、今日は楽しい時間を過ごせました。
  • 今までは、絵を人工の光の下で正面から見ることしかなかったが、今日のお話で「自然の光」「絵を背にしてみる風景」や「絵で描く空間」を意識しようと思った。襖絵に着目したのは初めてだったけれどすごく奥が深いなぁと思った。一度、直接襖絵を見てみたいと思います。
  • 私事ですが、円山・四条派からの流れを汲む京都市立芸大で日本画を学びました。今回のご講話で、日本絵画の本質・真髄の部分でよく解らなかった、理論化されていなかったものを解ることができ積年の胸のつかえが下りた思いです。ありがとうございました。できれば、現代以降の日本絵画(応挙の精神をつぐものとして)が如何にあるべきか、お考えをお伺いしたかったと存じます。
  • どのようなお話を聞かせていただけるのか、楽しみにしてこさせていただきましたが、予想以上に興味深い講演でありがとうございました。化学の開発技術者の顔と僧の顔の両面が、応挙の卓抜な技術と描こうとする心の世界の融合をあらわしているようで、感心しました。
  • 大学で日本画を学んだので、今日おっしゃられたことが日頃日本画について思っていること・学んできたことで、同じ事を考えておられる方がお坊さんで大変興味深くお話をきかせて頂きました。応挙の展覧会には以前行ったことがあり、障壁画が並んでいてすごいと思いましたが、感動できませんでした。建物というか「大曼荼羅」の説明がなく、感動できなかったと思います。「大曼荼羅の自然の中の自分」を絵に感じないといけないとわかった。今回お話をきかせて頂いて、とてもよく色々なことが解りました。楽しかったです。今まで、寺院でなんとなく見てきた絵や空間の感じ方を具体的にお話し頂いて大変興味を持ちました。音楽を鑑賞するとき等も、当時の時代背景や作曲者の気持ち等を知った上で聞くと心に響くのも違ってくるように、このように説明して頂くと深く心に写ってくるように思います。ありがとうございました。